平成22年4月29日 校正すみ
平成18年3月寄稿
山田三郎の兄宛の手紙
兄 山田 一夫
長らくご無沙汰致して居りました。その後も益々健康に恵まれてご奉公の趣を聞き何よりと喜ばしく存じて居ます。何からお知らせ致して良いやら唯順序もなく申し上げます。
まずお知らせ致したいのは勲の兵学校合格のことです。あれも昨年敗れて大いに残念だったでしょう。遂に今年の試験には見事「パス」しました故ご安心下さい。陸士と両方受けて両方とも合格致しましたが、無論兵学校に進むことです。入校は十月の上旬だそうです。勲の合格通知を得て先ず先ず安心いたしました。次に私達は今年の三月十五日に少尉に任官して喜んでいたところ、六ヶ月後の九月十五日付を以って中尉に進級致しました。少尉たった六ヶ月で中尉になるなど時局のそうさせるところと思います。一夫兄より遅い任官でしたが中尉には早めになりました。これも兵学校を終えてその道に進んでいるから進級も早いのでしょう。九月十五日から海軍中尉の三郎です。喜んでやって下さい。
申し遅れましたが、私達戦闘機専修の飛行学生一同、去る七月二十九日神池の学生教程を修業し、現在表記の地に勤務致しております。最初一先ず木更津の基地に居ましたが、八月中旬に此方に移動して参りました。毎日元気で隊員の指導に、飛行訓練に、邁進(まいしん)して居ります故ご安心下さい。
去る十日より出張で「マニラ」まで行き、二十日に帰って参りました。従って兄上よりのお手紙の返事も遅れてすみませんでした。「マニラ」まで行ったのですが「ジャワ」までは少し遠く残念です。私はその方へも出張することがありはしないかと待っておりますが、その折はどうしても面会致したいものです。
五月に三浦少佐殿に会う機会をなくし残念だったですが、あの時の手紙も御手に入った由、喜んでいます。
晃兄上の遺骨も八月上旬に帰還されました。十月上旬頃村葬があるそうです。晃兄の分まで大いに働く決心です。
いろいろ書きましたが、書面の都合上、これで失礼します。遂に男兄弟四人が軍人としてご奉公出来る機会が来ました。御身に御留意あられ、一意御奉公致されんことをお願いします。御健康と御武運長久を祈りつつ。
ジャワ派遣治第一〇三六二部隊平池部隊
山田 一夫様
三重県第二鈴鹿海軍航空基地隊気付
ウ三五士官室
山田 三郎
(なにわ会ニュース94号29頁)