今思うこと
溝井 清
なにわ会報でご挨拶できる最後の機会と知って慌てて正月早々にお便りします。
と 言つても小生昨年春以来、関節リウマチとの宣告をうけ、体力とくに筋力が頓に衰弱の一途、指の震えも止まず、不自由な毎日です。
さて、老いるにつれて我が海軍時代を思うこと頻りで、今日までも、居所に、事務所に「額縁入りの五省」を掲げ、生涯を海軍によって支えられ、今日の自分があるとの実感を強くもつています。
言うまでもないことながら、人との出会いは誠に奇なるもの。小生の場合、戦後から今まで、自ら求めてと言うよりは、友人、知人、特に先輩の勧めによって我が身を処することが多かった。
今もなお、友人の勧めに従い、数年前から、主として若い人々を中心とする営業集団の会長の役に就いています。会長とは呼ばれても飾り物、乃至、置物ぐらいの存在と自分では思っているが、他の人は、特に若い人たちは、私に昔の海軍士官の人間像を見ようとするので、こちらも気を許せません。
それは兎も角、我々の人生の最後の舞台で何をすべきかが問はれているのではないか。我々が身をもつて受け継いだ、そして正しいと信ずる海軍の良き伝統と真実をあらゆる機会を捉えて語り継ぐこと。これが、せめて老残の身の微力を振り絞って尽くすべきわが使命ではないかと年頭にあたり痛感しています。
(なにわ会ニュース100号66頁 平成21年3月掲載)