故 川久保輝夫 君から
森本達郎への手紙のこと
昭和19年11月の終りごろから12月初旬にかけて私が傷癒えて松山航空隊に着任して間もなく川久保君から一通の封書を受取った。
只一枚の便箋に簡単に「間もなく出撃する」旨の文意が認めてあった。
当時私は半年にわたる療養生活を送って居り、不覚にも回天部隊が編成され、彼がその一員として決死の訓練を行なっていることを知らず、第一線に進出できる幸運を祝福したばかりであったが、そのとき同封された写真が彼の最後の姿となった。
そのとき写真の裏に記された和歌一首が彼の辞世になったと思う。
菊水の鉢巻固く太平洋 聖戦に散るぞうれしき
やがて昭和20年2月頃、菊水部隊の戦果が公表されるにおよんで、親友の心情を察し得
なかった自分の呑気さに全く落胆したものである。
(ニュース遺墨集)
回天金剛隊の歌
一、沖の島過ぎ祖国を離 敵を索めて浪万里
空母戦艦唯一撃と 今ぞ征で立つ金剛隊
二、流れも清き湊川の 旗の光をいま承けて
先に征きたる菊水隊の 挙げし戦果に続かばや
三、聖戦(おおみいくさ)も四年の春を 南の海に迎えつつ
必勝のとき今来れりと 先ず魁けん金剛隊
四、若き血は沸き肉踊るかな 挺身必殺醜敵を
砕き沈めて千代八千代にも すめらみくにを護りなん
すめらみくにを護りなん
川久保輝夫作(ネットより)