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ニテロイ便り

森 栄

(前略) なにわ会誌第16号および綴表紙加藤兄よりお送りいただき、毎度ながら皆様方のご親切に感銘いたしております。

井上校長の教育方針も、祖国の現状に鑑みまことに適切なご配慮と思われ、なにわ会の前向き姿勢を悦んでおります。

皆様方のお子さん方には、よき家庭の躾をつけられ、今の全学連のような暴徒にならぬよう切に祈りあげて居ります。(中略)

自分の都合ばかり考えて、他人の尊厳を重んじない、基本的な日常の礼儀をつくすことは低級者のやることの如く思っているのか、恥かしがってできない。容易な仕事は馬鹿にして誠心誠意の努力を傾注しない。態度が横柄である。図々しい。上長も大事にしない等々が目につきます。

こんな大学卒はブラジルに来てもらいたくないもので、まず教育し直すには長年かけても困難でしょうし、余り鍛えると二、三年で日本に帰ってしまいましょうし、折角築きあげた日本人の信頼をおとしてゆくことでしょう。(中略)

この点、当地ブラジルで育った二世諸君は父親である一世の慨歎するような覇気に欠ける点は多いかも知れませんが、もっとずっと素直で、善良で平和的で社会に順応性も強いようです。こんな青年が仕事を覚えて自信ができ、覇気が出てくると、本当に立派な二世となって、周辺の外国人から尊敬されているようです。

たとえ知識のレベルは低くとも、人間道徳のレベルはかえってブラジルの方が高いかも知れませんから、これから子弟を育てるには、祖国日本のせまい場でなく、海外の適当な国の方が安全かも分りません。しかしこんなことになっては困ります。(中略)

「日本精神を見たくば海外の分家に行け」ということになっては祖国日本のため全く残念なことです。私たちは微力ながら、分家の建設に全力をつくしておりますが、祖国はつねに向上して、分家のお手本になってもらいたいものです。祖国と分家とがつねに向上を競い合ってこそ)我が民族の発展、人類社会に対する貢献も期せられることでしょう。この点で旧帝国海軍の兵学校躾教育を中心とする一般の空気は、今日になって眺めてみても学ぶべき点が沢山あったようですね。具体的にいうと旧帝国海軍のよき躾を身につけられた方たち、たとえば経営コソサ〜タント関係に在職の人とか、教育界に在職の方たちで、一つ「東郷塾」でも作っていただき、大学卒の人を六カ月ないし一年間再教育し、その卒業生ならば、どこの会社にも、海外のどの国にも安心して出せるということになれば、世の教育界に対し示唆するところが多大であろうなどと愚考しています。(中略)

当地はすでにまことに良い季節に入りました。72期の皆さまにも、どうぞよろしく。

(注、44330付、押本宛私信より抜すい)

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