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平成22年5月3日 校正すみ

入江 久憲君を偲んで

三好 文彦

故大熊直樹君の奥さんから、続いて平田隆一君から突然の電話。「入江久恵君が27日午後5時半すぎ逝去」と。

入江君は、5月半ばごろから食欲不振で、近くの医院通いをしていたが、6月18日、国立病院九州ガンセンター(入江君の自宅から近い)で精密検査、即刻入院。一家あげての看病も空しく、約40日の闘病生活のあと73歳の生涯を終えた。病名は膵臓ガン。

入江君のおふくろさんは、93歳で健在である。28日の通夜のとき「久憲を頼りに生きてきましたが、私をおいてあの世に逝ってしまいました。話し対手が一人いなくなりました。これからは老人俳句会に再入会、仲間の方々と語らいながらボケ防止につとめたい」と、淋しさに耐えて語って下さいました。しかし、そんな気丈夫なおふくろさんも、告別式の日、枢の前での焼香は、これまではりつめていた緊張に耐えきれずか、入江君の子供さんらに、しかと抱きかえられての合掌でした。

 入江君は囲碁が好きで、福岡海軍三校の囲碁同好会にはよく出席していたようである。

「7月20日の海軍囲碁会には、必ず出席するんだ、と、その日を父は楽しみにしていましたが、病床にあって駄目でした」と娘さんは涙して話してくれた。

入江君は、健康について意外と関心は強かった。時折の在福クラス会の席上、きまって話題にするのは、磯谷式健康法。ただし、酒の飲み方については、その健康法をマスターしていなかったようで、彼の飲み方は勇ましかった。

そんな入江君、いまは30数年前に他界された奥さんのもとへと行ってしまった。久しぶりの奥さんと、なにを語っているのだろうか。遠き日の思い出か。子供さん、おふくろさんとの昨日までのことか。好きな酒は、ほどほどがいいぞ。

ご冥福を祈る。

(なにわ会ニュース72号11頁 平成7年3月掲載)

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