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平成22年5月3日 校正すみ

鳥取ネービー会代表伊吹明夫様への弔辞

井上 旦(77期)

今日ここに、この様な場面で、伊吹さんにお別れを申し上げること、大変に、大変に(つら)いいことです。ここに鳥取ネービー会の一員として残念ながらお別れの弔辞を述べさせていただくことになりました。

 

「海軍のよき伝統精神の継承」を目的とする同会の代表としてあり、我々は数々の指導を戴きました。私は平成5年以来、会の諸業務を受け継ぎ、以来諸事にわたり多くの指導、教育を戴きました。

いつも笑い声で、時には江田島の生徒時代の思い出、戦時中のこと、零戦の飛行と戦闘のこと、さらには国家存亡の歴史、特にローマ史のことなど多岐にわたりました。私にとって僅か数ヶ月の江田島教育、しかし、全国を転勤しての諸勤務の間に、海兵諸先輩からは、公私にわたり戴いてきた数々の教導を、帰郷以来鳥取では伊吹さんからも継続して戴きました。

先輩72期の江田島慰霊祭には、伊吹さんの代理として参加をとの指示で、参列させて戴きました。その時の感激、「海兵同期の絆」の姿は今もなお心底にあります。

いつも笑顔で、嬉しい時には目をほそめ、大声で会話した伊吹さん。舞鶴の艦艇が入港時には賀露港、境港から日本海の体験航海、美保基地では搭乗飛行で周辺を飛行―この時に伊吹さんが終戦直後に出雲地区の川土手に零戦で着陸した時の面白い話も聞きました。

数々の海と空の行事を共にさせて戴きました。「潮気」ある思い出は尽きません。

 

昨年春以来、入・退院が継続、一時は回復の兆しを得ましたが、今年に入り早々に入院され、先月初め、矢田様と見舞いに訪れた時、あの笑顔と握手がとうとうお別れとなりました。

いつも伊吹先輩は別れる時には、必ず舷門で見送られましたね。数々の教導を戴きましたことは、心から御礼を申し上げます。伊吹さん、いま天空の何処あたりを飛行しておられますか? あの広い、蒼い海のどこらへんを航行しておられますか? 昨夜は満月でした。白く薄い衣の様な雲が音もなく流れていました。あの喋々たる「巡検ラッパ」の音色が、静かにながれていました。お別れに、当時の旗流信号、WAY(安全なる航海を祈る)を掲げ、ご冥福を祈ります。

平成12年3月22日

77期生徒 井上  旦

(なにわ会ニュース83号4頁 平成13年3月掲載)

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