平成22年5月14日 校正すみ
藤野 竜弥君への弔辞
相澤善三郎
藤野 竜弥君、40年の昔に戻り、敢えて貴様と呼ばして貰おう。
半年足らずの病との闘いで、貴様は何でこんなに早く世を去ってしまったのだ。今年の3月まで海上保安庁拓洋の船長として、海の務めに励んで居られたではないか。貴様こそクラスで最後まで船で頑張った海の男ではなかったのか。思えば貴様はクラスで一番長生きする資格があったのに。
貴様と俺は兵学校華の一号時代に第17分隊で1年寝起きを共にした。静かに黙々と隊務を遂行し学業に励み、サイレントネービーそのものの人であった。
卒業後はどこで会っても、いつもにっこり笑って黙って握手して別れた。それで全てが通じ合う珍しい男でもあった。海上保安庁でもきっと静かな名船長であっただろう。
貴様はクラスメート高橋の終始手厚い治療を受けていた。心ひそかに羨やましくもある最後であったと思う時、貴様を失った悲しみが幾らかでも薄らぐのが、せめてもの救いと言えようか。
2人の息子さんは立派に成長して社会で活躍して居られるとお聞きして居る。家長としての責任と社会人としての任務を貴様は立派に果して逝った。
在天の霊よ、心安らかに眠ってくれ。
海軍兵学校第72期クラス会 相澤善三郎
(なにわ会ニュース49号23頁 昭和58年9月掲載)