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故冨士栄一兄の憶い出

三笠　清治

　富士兄との出会いは、恩へば、兵学校第31分隊、４号又は３号生徒として共に学び、共に69期又は70期一号生徒に鍛えられた数々の憶い出のある江田島生活である。
　　毎年69期の高橋忠夫先輩（現東急建設�兜寰ﾐ長）を中心に31分隊会を行ってきたが、今年は富士兄入院中のため不参加ということで何か物足りなかった。何時もの生徒時代のやんちゃな言葉が聞けなかった。　相棒の相澤、伊佐他諸兄もさびしそうであった。一昨年の江田島還暦クラス会で、２回目幹事の大役を果したその責任感に頭がさがる。多少歩行の困難な彼が遅くまで皆と共に夜ふかしをし、翌日ゴルフに行くんだと早朝出掛けた姿が憶い出される、　

また、今年正月の湘南クラス会に、大手術、退院後余り日数も経っていないのに、鶴友会の事務局長として云々ということでわざわざ浅草より出掛けてきたのには全く、驚き、何もいうことない身分で静養しておればよいのに、又そんなに無理しなくてもよいのに、と心秘かに感じておりました。日誌によると、昨年９月13日　鎌倉佐藤病院にて中国の健康法太極拳と共に導引術について、自分はやってみて体の調子がよいから君もやってみないかと奨められ、更に同月17日同兄から電話があり、導引術をやっているか、健康に十分注意しろと大分説教された。

其の後入院中に毎朝１〜２時間位鎌倉の神社仏閣を殆んど散歩がてらお参りしたことを聞いた。君も散歩をやれと奨められた。

思うに同兄は外面上、休は大きく豪傑肌であるが反面、心のやさしい男であった。最近、鎌倉へ受診のたびに彼の病室を訪れ、冗談等をかわし、顔色も大分良いように見受けられたが、この度、７月上旬病状が急変し、遂に永眠されたことは誠にさびしく大変残念である。

何時までもあの特徴のある下町の東京弁をと思っていましたが、もう聞かれない。

（なにわ会ニュース53号37頁　昭和60年９月掲載）

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