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祭   文

新庄 浩

 謹んで、海軍兵学校第七十二期、海軍機関学校第五十三期、海軍経理学校第三十三期の英霊に申し上げます。

 本日、ここに平成十二年度なにわ会参拝クラス会に当たり、ご遺族、教官および、生存者一同靖國の社頭に相集い、神鎮まります諸兄と語り合い感慨を共にすることをお許し下さい。

 思い起こせば、昭和十五年、我々は海軍三校に入校し、海軍々人としての一歩を始め三年間の教育を終るや、昭和十八年決意を胸に太平洋戦争の最前線に赴いたのであります。終戦迄の二年間、戦いの最終段階、諸兄は勇戦奮闘、時に特攻作戦に於いては壮烈無比鬼神も泣く偉業を敢行され、全世界を震骸させましたが、戦は吾に利あらず遂に敗戦の止むなきに至り、余裕なき必死の戦は必敗することを学びました。この戦に於いて我ら三校で四一二名の期友が殉国の大義の為に散華されました。誠に痛恨の極みであり、御遺族のご心情を察しますと生存者一同言葉もない次第であります。

 顧みますと、戦後の復興、経済の興隆等又それに伴う物質的豊かさのあまり、心と精神の頬廃その極に達した為発生している多くの不祥事、事件等に就いては歴代の幹事により詳述されておりますので私は控えさせていただきますが、一言申せば我が国の社会各分野に於ける若い指導者の中に英知と責任態に欠け恥を知る心構えのない者が極めて多いのが誠に遺憾であり、この責任の一端は我等世代にもあると反省しております。

一方、在天の諸兄にご報告出来る将来の明るい事例についてご報告いたします。約十年程前より二十代から三十代の若者の中で、遊就館に於いて特攻隊員の遺言に涙を流し、自分達と同じ年代の当時の若者のすばらしさに心を打たれ、更に歴史戦史等を真面目に勉強している人達があり、零戦搭乗員会では特別に賛助会員とした事例であります。国中に商業主義に堕したマスコミの影響等により心ない若者が多々ある中で、誠に清々しく将来頼もしい限りであります。

 緑濃いここ靖國の御社で我が国の将来を憂慮しておられる諸兄、我等は生ある限り毎年ご霊前に参上し、又語り部となって諸兄らの遺勲を子孫に伝える所存でおりますので、何

卒我が国の行末とご遺族のご多幸にご加護を賜り、併せて我等にも厳しいご叱責とご鞭捷を賜ります様、衷心より祈念して祭文の奏上を終わります。

   平成十二年六月五日

       なにわ会代表 新庄  浩