TOPへ    漫画目次

行進 歩調とれ

「生徒館前、同東側通過ノ際ハ歩調ヲトル。」と書いてある。
      (ニュース15号10ページ参照)
紳士の卵である生徒たるもの、人が見ていようがいまいが、たとい雨が降ろうが、腹がへっていようとも、この規則は守らねはならぬ。かくしてこのような図になるのである。
この生徒は、午前の課業が終ったあと、教官に質問をしたためか、あるいは挙動不審の故をもって週番生徒にお達示をくらったのか、いづれにしても一般の隊列にはぐれて、1人だけで講堂から生徒館に帰る破目になったものである。
左手にペグを抱え持ち、右手は水平以上に振り上げ、躾教育覚書のとおり、「生徒館前ヲ歩調ヲトッテ、堂々タル行進」を行なっているのである。
折柄、菊花のご紋章のあたりまで来ると、食堂から雨天集合場を吹き抜けた1陣の春風が、昼食のライスカレーの匂いを運んで来たのである。
したがって、この生徒の腹の虫は、グーグーとなった次第である。間もなく、「兵学校のおかずは大根に人参、たまには混ぜめしライスカレー」とりゆうりょうたる食事のラッパがなるであろう。今日は隣席の増食生徒が青マークで入室しておる。さすれば、そのスペヤーはわが胃袋におさまるであろう。半眼に開いた頭の中には、すでに満腹感を覚えているのである。(もっとも一号のズべ公は、このようなテレくさい歩調取れはしないで、短絡あるいは、ショートサーキットと称して生徒館の横の入口からこそこそと食堂に向ったものである)

TOPへ    漫画目次