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平成22年4月29日 校正すみ

福山正通君を偲び、平成19年正月の

宮中歌会始めお題「月」への応募

林 藤太

戦場(いくさば)に 散りにし  戦友(とも)を偲びつつ

仰ぐ夜空に あの時の月

この歌は、同期の親友、今は亡き福山正通君を偲びながら詠(うた)ったものです。全国より数千数万と寄せられる中で、入選など望むべくもないが、応募することに意義ありと愚考し出しました。

彼とは霞ヶ浦及び神ノ池航空隊と同じ戦闘機操縦員として寝食を共にしたが、実戦部隊に配属後は会う機会も無いまま四ヵ月ほどがすぎました。

昭和十九年秋、私が第三三二航空隊戦闘機隊員として岩国基地にいた時、突然福山中尉がゼロ戦で着陸、南方進出途上とのことで、夕食を共にしながら語り尽くせぬ思いのまま、士官舎の外に出たとき、秋空に冴える月を仰ぎながら、「この次は國で会おう」と手を握り誓い合ったあの時を今も忘れることは出来ません。

彼は翌二十年一月比島リンガエン湾にて散華、私は武運つたなく生き残りました。八十歳を越えた今も、福山君の勇姿と冴えた月が重なり、万感の思いを愚作ながら詠んでみた次第です。

(なにわ会ニュース95号14頁 平成18年9月掲載)

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