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余生は 開き直ろう!

山本 省吾

1、初めに

 泉五郎兄の「耄(もう)語録」を読んで全く同感で胸の閊(つか)えが下りた感じがした。ところがやはり腹の辺ではなんとなく治まらない感じがする。

 私は70歳まで企業幹部の一員としてフルタイムで働いていたが突然発癌(がん)し、4度の全身麻酔開腹手術を行って急速に余生への道に直行し、落胆し、(同時に胆嚢も切除)その後、私なりの「開き直り」の人生を送っている。参考になれば幸いである。

2、マスコミに目を出すな

 マスコミの情報がなんとなく気に掛かり、世の中に遅れるのが怖くてついテレビや新聞、週刊誌に目を通す。殆どは後味が悪くて悲憤慷慨(こうがい)の基になり精神衛生上好ましくない。

 テレビは、NHKの必要番組以外はまず見ない。(NHKには受信料を否応なく支払わされるので、元を取り返さねば損。)民放は古い映画など見たいもの以外はすべてオフ・リミット。従って地デジや衛星放送などには全く縁がない。

 新聞は地方紙一紙のみ。これは昔の回覧板式発想で自治体や近隣の情報を得るのに必要。

 これで世間の話題に遅れたり、耄碌(もうろく)したりすることはまずない。

3、公共施設に出向け

 私たちの税金で運営されている博物館・美術館・資料館・植物園等は、70歳以上は「敬老」とのことで殆ど無料である。証明書さえ見せれば全国的に利用できるところもある。平日ならゆっくり見廻ることもでき、暖冷房は完備され、トイレは清潔である。

 私たちは無駄に使用する税金に対して、少しでも還元してもらおうではないか。更に地方紙の情報欄を精読すれば、自治体や外郭団体が予算を使うために、各種催し物、講演会、見学会、音楽会などを次々に開いているのが判る。無料のもあれば老人割引(敬老割引?)も結構多い。これも利用しない手はない。特に催し物の特別展など見応えは多く「得」した感じもするし、コンサートでクラシックも楽しめる。

 「そんなこと言っても足腰が弱って外に出られない!」

 そんな人こそ次の保険を有効に利用してほしい。

 私も手術後、脚が弱っているので介護保険を利用して遊園地のゴーカートのような「電動車椅子」の貸与を受け、時速6キロで歩道を闊歩している。JRや私鉄の車内以外は何処でもほぼ通行OKである。

4、保険を利用しよう

 後期高齢者保険や介護保険など年金から天引きされ、その額も馬鹿にならない。私たち後期高齢者?になれば殆ど医者や薬の世話になっていることと思う。多分、健康保険を利用しているだろうが民間の医薬品を買っている人も多いかも知れない。政府は一応国民皆保険を唱っているので殆どの治療や医薬品には保険が適用され、高額医療は還付される。ムダな使用は不要だが、まず保険適用の有無を医者に聞くべきである。最近は「ゼネリック薬品」も普及し、安価で種類も増えているし、最近はやりの「メタボ」対策の和漢薬も保険はきくし、足腰の弱った「リハビリ・マッサージ」も健康保険の対象になっており、私もお世話になっている。

介護保険もまた然り。介護を要する事態になってから(寝込みや骨折など)申請しても実際に適用されるには1〜2ヵ月はかかってしまう。身体に不調が出れば早目に医者に相談し、地区担当のケアマネジャーと親しくなった方がよい。

 厚労省役人たちの大きな無駄遣いに対抗して、せめて私たち後期高齢者たちが本来の目的にお金を使って彼等のムダ金を減らさせようではないか。

5、インターネットで現在を知ろう

 それでも一日に余裕のある人は気分転換にパソコンに触れて現状を見て欲しい。

 「インターネット」「プロバイダー」「ウエヴ」「フォルダ」「ファイル」「ブログ」等々の聞きなれないカタカナ文字に惑わされて「インターネット」は苦手だという御仁(ごじん)も多い。

 ところがIT技術は分進時歩で改良されているので、いまや小学生でも自由自在に駆使している。我ら老いたりと雖も小学生なみの頭脳と手先は動くであろう。初心者クラスのパソコンが使えぬ人は、明治初期に電話に驚いた旧武士に似ている気さえする。

 現在、貴兄の住所を入力すれば、空中写真で家の広さは勿論、道路写真で家の大きさ、形まで検索できる時代でもある。玉石混合、世界中の情報が渦巻いている現状を無視することは出来ない。まだの人はぜひ、お孫さんに頭を下げて習得してほしい。

 また機能的には「解像度を変化」すれば文字の大きさはいくらでも変更できるので老眼鏡の使用は不要である。

昨今は携帯電話からでも、テレビに専用のチューナーを繋いでも「インターネット」は簡単に見られるようになっている。自分の好みの情報を検索できるので、一般マスコミのように押し付けられることもない。

6、あとがき

 以上、読み返してみると余り「開き直り」でもなく、単なる関西人特有の「シブチン」「ガメツサ」を実行しているに過ぎないじゃないかと反論されそうである。

 しかし私自体は国民へのPR不足、無駄遣いの多い政府に対して、自分の出来る範囲で、自分の支払った税金を、出来得る限り自分自身で有効に戻してもらうのは当然の「開き直り」であると思っている。まして残る余生を少しでも健康に、また日々が楽しく過ごされれば越したことはないと感じて一文を投稿した。

追記 必読! 「なにわ会ホームぺージ」

インターネット「なにわ会HP」は当会誌編集長の伊藤正敬兄が数年にわたって編集されたプロ顔負けの力作である。勿論、他のクラスには類のない素晴らしいものである。
内容は従来発行のなにわ会誌の資料・名簿・戦記・遺墨・追悼文などを中心に項目別に整理し掲載してある。過去の活字をコンピューター内に入力することは例え専用ソフトを利用するとしても膨大な作業である。現在の会誌に置き換えれば数千ページに及ぶ内容が取り込まれているといえよう。改めて兄の努力と熱意に感謝申し上げたい。

なお、この歳になって再読すれば、若年時とは異なった幅広い客観的な感想を受けることは間違いあるまい。

(編集部)
山本省吾君はパソコンに詳しく、完全に使いこなしている。山本君は桂君と協力して、現在HPに取り込んである多数の戦記、戦没者及び復員後物故者関連の記事をチェックして誤りを訂正してくれた。お陰で誤字、脱字が随分減少した。また、彼のコメントで字を大きくし、行間を広げたので、ずいぶん読み易くなった。 彼の好意を披露し、感謝の意を表する。

(なにわ会ニュース10077頁 平成21年3月掲載)

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