故富井宗忠君の入校三日目、
昭和十五年十二月三日父上宛の書簡
拝啓
初冬の候、父上にはお変りございませんか、私も元気溌溂と入校し.無事に日を終へる事が出来ました。
兵学校のキリッとした生活にも日を送るにつれ慣れてきます。
第一日、15・12・1 入校式及び校内見学等、
第二日、起床動作、之は吾ながら感心する程六時に自が覚めます。以後課業始め、精神教育等あり、夜の就寝動作は
まだ不充分、一号生徒にお叱りを受けて、ドナリ声が絶えません。上級生は相当きつい。然し、其の一語一語が真に我等を早く兵学校生徒として上級生と共にやって行ける様にしつけて下さるのだと思う何となく有難い感じがするのです。乱筆ながら失礼します。
敬具
那智よりの軍事郵便 最後の便
拝復
久し振りの御幸便有難く拝見仕侯
秋冷相催候処、父上には益々御健勝にて御勤めの御事と大慶に存奉侯 降って小生、張切の艦内勤務「相変らずにて連日愉快に元気に努め居侯間他事乍ら御休心下され度侯
御懇望の召集、同じ海軍にて御奉公する身として御同慶の至りに存じ候 御承知の事と存じ侯へども、先日、宗昭生徒採用予定者なる旨、幸便に接し、男三人軍人として進むべき道に進み得る事、家門の誉、邦家の礎として誠に喜びに堪へざる次第に侯 来春入校予定なるを聞き、専ら身体に注意し、生徒生活の規律正しき基礎を家庭にて確率すべく努力の要之ありと一筆申し送り候
私共の期友も或は空に、或は水中に、又水上艦艇に夫々志す所に身を立て活躍致し居り候 申し遅れ候えども、小生00日附を以て中尉に進級、相変らずの那智の甲板士官にて張切り居り候 桜一つ頂戴致し候も、気分何等変らず、唯毎日を艦の為、海軍の為努めいる現状に侯
先便御便の如く艦長交替せられ、旧艦長渋谷繁太郎大佐は海上護衛総隊司令部附に転任せられ候 新艦長は鹿岡田平大佐にて色々日常細部に亘り種々御注意を承り、仕事の無き
日無之、之我々の為有難く奮発致居侯
暇を選び断片的に一筆近況御報告申し上侯
父上様には御年柄、お体に注意せられ、御健斗せられん事切望致候
小生、益々元気旺盛 敬具
父上様 宗忠
(遺墨特集)